俺は怖い話オタクでもあるんだ。物心ついた頃から霊感があるっちゃあるし、無いっちゃ無い。まぁ、無い寄りの無いくらいのレベル。
大学生の頃の話なんだけど、いつもつるんでた連中はみんなキモ過ぎて彼女もいないし、働きたくもないので金も無いという、ある意味清清しい奴らだった。
コミュ障でクラブやサークルにも入っていなかった俺達は、貴重な大学時代の夏休みをそれはそれは無駄に、無為に、無能に、無残に、織田無道に過ごしていた。
ここで簡単に俺たちのスペックを。
・俺:まさにセレクティドな存在。高校生くらいまでアトピー。霊感なし
・山田:性欲の打ち出の小槌のような男。その有り余る性欲を芸術活動に昇華させるスゴイ奴。絵は下手。霊感ナッシング
・伊藤:実家が貧乏なのにバイトをしない奴。基本的に俺たちみんな実家が貧乏なのにバイトしないタイプ。霊感永遠のゼロ
・八重樫:野球選手のモノマネが得意。こいつがモノマネし始めると、俺達は『ゲヘヘへー、こ、こ、殺す気かー、ゲヘヘ』等と笑い死にしそうになる。野球
選手の生霊が憑依していると言い張る
・西口:マーシャルアーツの使い手。パロスペシャルと虎王をつかいこなす武神。俺達が盛り場でDQNに絡まれた時にまっさきに姿を消したことがある。霊感は
疲れていると金縛りになる程度
俺の部屋に集まってバーチャファイターをしていたある日、あまりに屋外に出ていないことから、西口が『夏といえば心霊スポットでしょうが。私くらいの戦闘
力があれば悪霊もねじ伏せることが可能だと思われますねぇ。行かれませんか、皆さん?』とキモい口調で訴えかけてきた。
別に反対する理由も無かったので俺達は、『お、おう』と一応頷いた。
伊藤が、『心霊スポットってどこ行くんだよ。ここらへんにあんの?』と尋ねると。
西口『はい、◯◯号線を??方面に行くと山を越えることになるでしょう。その道すがらに廃墟があるらしいのですが、そこが出ると噂なのですよ。なんでも、
その家の子供が悪霊を封じ込めた祠を吹き飛ばした祟りで一家全員が非業の死を遂げたとか、単に家が古くなったので一家で引っ越していっただけとか、物騒な
噂が絶えないんですよねぇ』
八重樫『後の理由は物騒とも思えないけどね』
俺『そうだ、そうだ、クリームソーダ!』
伊藤『でも、山ってかなり遠いだろ。どうやって行くんだよ。自転車では無理だし』
その頃の俺達のモットーは体力の温存であったので、無用な運動は極力控えていたのである。阿部真央もびっくりのモットーである。
西口『誰か車を出せる人はいないのでありますか?』
俺達は一斉に顔を背けた。実家が貧乏で、どこの家も自家用車をもっていなかったのである。
八重樫『資本主義の犠牲者達なんだよな、俺達って』
その夏、俺達のバーチャファイターの腕だけが上がった。
返信する