物の怪、山の怪見たことある?


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219 2015/04/20(月) 12:44:12 ID:YzrUKWGgG6
柳田国男の『遠野物語』61章で語られる、森の中で白い鹿に遭遇した和野村の嘉兵衛という猟師の話はなんだか好き。
白い鹿は神だと信じられているので、殺せば祟りがあるかもしれないと思いつつ、猟師のプライドをかけて銃を撃つ。
ところが弾が当たったはずなのに白い鹿はビクともしない。

以下本文より抜粋。
『此時もいたく胸騒ぎして、平生魔除けとして危急の時の為に用意したる黄金の玉を取出し、これに蓬を巻き附けて打ち放したれど、鹿は猶動かず。
あまり怪しければ近よりて見るに、よく鹿の形に似たる白き石なりき、数十年の間山中に暮せる者が、石と鹿とを見誤るべくも非ず、
全く魔障の仕業なりけりと、此時ばかりは猟を止めばやと思ひたりきと云ふ。』(45ページ)

お守りとして持っていた黄金の弾(猟師の世界では『守り弾』という)にヨモギを巻いて撃ったが、やはり白い鹿は動じない。
近くに寄ってみれば鹿ではなく、石だったというオチ。
何十年も猟師として生きてきた嘉兵衛が、石と鹿とを見間違えるわけがない。これはやはり山の神による不思議な現象だったんだろうと思い、慄然とするお話。

しかしヨモギなんて異物を巻き込んだ弾丸を発射したくらいなら、まともに狙い通りに撃てるものなのか、そもそも銃身内で詰まらないのか、はなはだ疑わしい……。

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