天然物信仰に陥る原因のひとつに、「自然は人間の身体に悪い物は作らないはずだ」
という思い込みがあります。
しかし、自然は人類のために存在しているわけではありません。
自然が人にとって都合のいい物だけ作り、都合の悪い物は作らないなどと、
それこそ都合の良いことを考えてくれるわけはありません。
そういう誤った認識こそ人類の驕りではないでしょうか。
たとえば、多くの人が忌み嫌っている農薬は、
「人間にとっては安全性が高いが、作物に悪影響を与える植物や昆虫や微生物などには有害」
という選択的な化合物です。
自然が作る殺虫剤は数多くありますが、それを真似て、人にとって都合の良い化合物を作る能力が
人間にはあります。
その能力を最大限に生かしてできたのが農薬です。
自然は人間を特別視するいわれがないので、人間だけに都合の良い化合物は作ってくれませんが、
人間にはそれができるのです。
昨今、「無農薬」「減農薬」「有機栽培」などといって、様々な農薬代替物が使われており、
一般に、無農薬栽培された野菜の方がそうでない野菜より安全だと信じられていますが、
農薬代替物は、農薬ほど厳密に安全性のチェックがなされているわけではありません。
木酢液のように、かえって農薬よりも危険な物もあります。
そして、無農薬・減農薬栽培の危険性にはもうひとつの側面があります。
植物は動けない代わりに体内で生態防御物質(天然農薬)を作っています。
野菜だって、なにも人間に食べられるために生きているわけではありません。
自分を守るために必死なのです。
生き残るために毒物を生成し、捕食者や病原菌に対抗しようとします。
このような防御化合物は、昆虫や細菌に選択的に有害というわけではなく、
人にも有害な場合が多いうえに、農薬よりもかえって発ガン性が高いと言われています。
ただし、生体防御物質は通常の生育には必要無いため、普段は量が少なかったり
作っていなかったりする例もあります。
そして、昆虫などに葉をかじられた段階で初めて、その破壊された葉にのみ有害物質を作る
反応が起こることがあります。
あるいは、かじられたというストレスを他の組織に伝えるシステムがあり、その信号によって、
昆虫などに有害な化合物の濃度を増やしたり、新たに合成したりします。
よく「農薬まみれで虫も食べないような綺麗な野菜は危険だ」という意見を聞きますが、
実際には逆で、人工農薬を使わなかったがために虫が食べている野菜の方が、結果的に
発ガン物質が増えてしまっていて危険な可能性が高いのです。
これが自然の摂理です。
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