ペストに感染した患者、生死を問わず隔離・遺棄した狂気島 ポヴェリア島 1
これまで国内に限定した島ばかり偏執的なまでにこだわってきたが、たまには外国の『怖い島』を取り上げても罰は当たるまい。
と言っても、あえてメキシコの『人形島』はやらない、ひねくれ者の僕であった。アレはいささかケレン味が強すぎる。
そこでイタリアのポヴェリア島を紹介しようと思う。
これまで前スレでは
>>44のハンセン病患者を隔離した大島、
>>274の同じく長島、当スレにおいては
>>139で天然痘患者を隔離した下馬刀島、
>>143の馬島、
>>161の前島、
>>163のアンジャ島と、伝染病に感染した者を隔離した歴史のある島を取り上げてきた。
離島という天然の閉鎖空間は、同時に合理的な隔離施設となり得ることから、我が国のみならずこのポヴェリア島をはじめ、
フィリピンのクリオン島(ハンセン)、ハワイ州のモロカイ島(ハンセン)、ニューヨークのノースブラザー島(天然痘)、南太平洋の環礁ナウル(ハンセン)と、
世界中に分布しているのだ。
水の都として知られるベネチアの市街地近くに問題の無人島・ポヴェリア島がある。これが『狂気の島』の異名をもつというから食いつかぬ方がおかしい。
英紙『デイリー・テレグラフ』やイタリアニュースサイト『ザ・ローカル』によると、中世から数々の悲劇的な出来事がくり返されてきたという触れ込みがソソる。
というのも、14世紀、都市国家間として関係が悪化したベネチアとジェノバの争いの舞台となったのを皮切りに、
ヴェニスでペストが大流行した際には拡大を防ぐため、数千人規模の感染者の生死を問わず島へ送って隔離、または放置したというから驚きを禁じ得ない。
古代ローマ時代には墓地として使用され、ペスト流行のときは検疫センターという名目を掲げ、大量埋葬地としてフル回転の働きを示す。
累計16万人もの人間の屍が眠っているとされており、島の土壌の50%以上が人間の遺灰ではないかとも噂されている。
また20世紀に入り1922年になると、検疫所の跡地では、ある医師によって精神病院が運営された。
ところがこの医師は、いわゆるマッドサイエンティストを地でいくような男だった。患者にノミやハンマー、ドリルなどを用いてロボトミー手術を行っていたらしく、
鬼畜の実験をくり返した挙句、医師自身も「幽霊のせいで気が狂いそうだ」と口走り、病院の塔の上から投身自殺してしまった……。
1968年に病院が閉鎖されてからは、しばらく農業用地として使用されたものの、やがて完全に放置。
そして、今では島へのアクセスは国有地化したイタリア政府によって制限され、地元漁師をはじめとして近づこうとする者はいない。
漁師が嫌がるのは、周辺海域で網を投じると大量の人骨がかかるからだ。
島周辺の地元では、『邪悪な人が死ぬと、ポヴェーリア島で目を覚ます』という不吉な諺もあるぐらいだ。
もっともこのヘヴィー級の『怖い島』も、所有するイタリア政府の資金捻出策の一環で、昨年2014年5月7日に競売へかけられる運びとなった。
ただ、実際に国の所有権を売却するわけではなく、『99年間のリース権』を与える形となるそうで、政府側としては島に残されている城や修道院跡も含めて、
『高級ホテル』を建て、観光地として開発してくれる業者の参加を希望しているという。
さまざまな噂が取り巻く島が果たして売れるのか、欧米メディアも広く注目しているイタリア政府の売却策だが、これに待ったの声をかけているのが島と
海を挟んだベネチア・ジュデッカ地区の住民たち。
「私たちは島が公共のものであり続けて欲しい」と話す男性は、島が開発されるのではなく、現状維持のまま保存されることを望んでいるという。
そこで住民たちは、「Poveglia per tutti(みんなのポヴェリア)」というFacebookページを立ち上げ、自分たちが競売に参加してリース権を得ようとする運動を開始。
目標額の2万ユーロ(約280万円)の調達に向け、参加者に99ユーロ(約1万4,000円)の寄付を呼びかけているそうだ。
……『世界一幽霊の出る島』などと下衆な側面を併せ持っており、『サイレント・ヒル』や『SIREN』も真っ青の舞台装置がよくも揃ったものだと感心する。
個人的に廃墟マニアの不法侵入ぶりはいかがなものかと首をひねる方だが、この島に限り精神病院跡に潜入し、当時を偲ばせる狂気の空気を伝えるのもアリかと思う。
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