・職場の同僚15名ほどで海に行った時のこと。
到着が遅れに遅れ、陽が沈みかけた時間に到着。
「仕方ないからバーベキューだけでもやるか...」
各自食材の準備をする中、“今だ!” ウケ狙いで密かに持参したスイカのビーチボールを抱え、ズボン下に履いていた水着で海へ。
「おいアイツ見ろよ!」「陽が沈んでも行くんかい!(笑)」「手伝えや!(笑)」
水着に気付いた同僚達の笑い声を背後に感じながら、満足げに海に近づいていく自分。
...とはいえ、いわゆる出オチのウケ狙い。海に入ることが目的でもなく、引き返そうと振り返った時、“ツルッ!(え?!)”
砂浜ではなく暗い岩場であったため、使い込んだサンダルの底も踏ん張りがなく瞬間的に両手を着く。
「(あ...ちょ...)」四つん這いになりながら必死に顔を上げると絶望的な光景。
バーベキューの準備に集中、かつ「手伝わない奴は放っておけ」とばかりに、10人以上居る同僚が一切コチラを見ていない。
加えて恐らく、アチラからは暗闇と同化した自分の姿は確認できないであろうことに気付く。
ひたすら海を見て進んだため、かなりの距離を歩いたことに気付かなかったのだ。
下は確認できないが、ヌルヌルしていて四肢で踏ん張り現状維持するだけで精一杯。
丁度、陸上短距離のスタートのような姿勢のため上手く叫ぶこともできない。
股越しに岩と海を見ると、緩やかに傾斜しながら、最後は急激に絶壁状になり海へ没しているという、かなり危険な形をした岩に居ることがわかった。
岩の向こうは果てのない暗黒の海。ツルッといったらそのまま暗黒に落ち、激しい波と岩、ヌメリで這い上がることができず、
頭でも打てばそのまま沈み、闇の中で気付かれることもなく、仮に気付かれても近寄れず、朝まで発見されない状況であろうことに気付く。
まずサンダルをゆっくり捨て、爪が剥がれようと構わないとばかりに少ない突起を探し、ガリガリと削ってはヌメリを無くすことから開始。
四肢それぞれに同様の苦行を課して、一歩、また一歩とゆっくり海から離れる。
やがて...気が狂いそうな両手両足の痛みを抱えながら、気力体力ゼロ、ゾンビのような両手ポーズとガニ股で仲間の元へ。
「いつまでサボってんだよ!(笑)」
「スミマセン、はは...」説明する力もなく、それぞれが談笑している平和な空気を壊す気にもなれず、
痛み続ける両手で痙攣しながら野菜を切っていた思い出。
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