■読みやすい文章は「デザイン」が優れている
村上春樹さんや林真理子さん、糸井重里さん、『嫌われる勇気』の古賀史健さん。
彼ら彼女らの文章は、スルスルと読める。
とっても読みやすい。
その「読みやすさ」の正体ってなんだろう? と考えてみる。
読みやすい文章は、パッとその文章を見た瞬間に「読みやすそう!」と思える。
これは「文章の中身」というよりも「デザイン」に近いのではないかと思う。
漢字とひらがなのバランス、改行の位置、「(会話文)」の割合などを計算し、
「ビジュアルとして」読みやすくデザインされているのではないか。
文章の中身が大切なのは言わずもがなだけれど、それ以前に、パッと見の
デザインが秀逸なのだ。
たとえば、村上春樹さんの文章。
--------------------------------------------------------------
彼女の名前は忘れてしまった。
死亡記事のスクラップをもう一度ひっぱり出して思い出すこともできるの
だけれど、今となっては名前なんてどうでもいい。僕は彼女の名前を忘れて
しまった。それだけのことなのだ。
昔の仲間に会って、何かの拍子に彼女の話が出ることがある。彼らもやは
り彼女の名前を覚えてはいない。ほら、昔さ、誰とでも寝ちゃう女の子がい
たじゃないか、なんて名前だっけ、すっかり忘れちゃったな、俺も何度か寝
たけどさ、今どうしているんだろうね、道でばったり会ったりしても妙なも
のだろうな。
――昔、あるところに、誰とでも寝る女の子がいた。
それが彼女の名前だ。
『羊をめぐる冒険』より
--------------------------------------------------------------
パッと見ただけで「読みやすい!」と感じないだろうか。
中身を読む前に「美しい」とわかる。
返信する