僕は高知市内に住む高校生で、付き合って1年ほどになる彼女がいました。
彼女の家は大杉という旧村で、高知市から20kmほど北へ行った、四国山地の
麓ともいえる山深い集落にありました。
ある年の夏休み、彼女の家に泊まりに行った時のことです。
晩飯をご馳走になり、彼女の部屋で、ひとしきり、他愛もない会話をして、一息ついたとき、
不意に彼女がこう言いました。
「ねえ・・・おもしろいもの見たい?」
含みのある笑みを浮かべて、おもしろいものとしか言わない彼女に、まあいいやと思い、
見たい」と返事をすると、彼女は、じゃ、ついてきて、と僕を外に連れ出し、家の裏手から、
細い山道を森のほうへ向かって歩き出しました。
森の中は恐ろしいほど真っ暗闇で、僕は足元もおぼつかなかったのですが、途中から、彼女が
手を引いてくれ、何とか歩を進めることができました。だけども、進むに連れて、あまりの
薄気味悪い雰囲気に、思わず、
「どこに行くんだよ?!こえーよ!」
と声を荒げたのですが、彼女は小さい笑い声を出しながら、「もうちょっと」と呟くだけでした。
10分ほど歩いたでしょうか、水の流れる音が聞こえてきて、近くに沢があるのを感じました。
そのときです、彼女が立ち止まり、「ここで待ってて」と言って、道から少し外れて、
沢のほうへ向かいました。暗闇に目が慣れてきてたので、沢の手前で彼女が、身を低くし、
沢の様子を窺ってるのが見えました。
そして、やおら、僕のほうを見て、手招きをするのです。
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