タコはスケベオヤジのメタファーか 日間賀島(ひまかじま)
日間賀島は三河湾に浮かぶ島で、知多半島寄りに位置し、愛知県知多郡南知多町に属する。
海産物が名産として名を馳せ、とりわけトラフグとタコは島の名物になっている。
日間賀島にはそんなタコにまつわる伝説が語り継がれている。それが『千代取り岩伝説』である。
豊浜墓所の海の千代取り岩についての物語だ。
その昔、須佐の荒磯松の近くの粗末な家に、千代という若い娘とその母が住んでいた。千代は評判の美人で知られ、村の若者たちの憧れの的だった。
春の引潮のとき、千代は沖の磯まで出かけて、日課である潮干狩りに精を出していた。
貝や海藻を拾うのに夢中になっていたとき、何かが足に絡みついた感触を憶えた。
足元を見れば大きなタコだった。浅瀬に取り残されたのであろうタコは、千代の脚を這いのぼり、たちまち白い太腿まで触腕を伸ばしてきた。
千代は鎌を振り回し、その一撃でタコの足が1本切れた。
タコはあわてて岩陰に逃げ、千代は事なきを得た。残されたタコ足は太く、カゴに収まりきらぬほどであった。ともかく大収穫であった。
翌日も昨日と同じところに行くと、やはりあの大ダコがいた。千代はまた狙うことにした。
赤い腰巻から白い腿を差し出して誘ってみる。案の定、タコは足を伸ばしてきて千代に抱きつこうとした。
千代はそうはさせまいと、鎌で一閃。タコ足1本をゲットした。
次の日も例の場所に行ってみたが、あいにく大ダコはいなかった。15日経ってから行ってみると、タコはまるで待ち侘びていたかのようにいた。
千代は味を占めていた。なにせタコ足は食べ甲斐があり、しかも美味ときている。
彼女はさらにタコ足を3本切り落とした。タコに残された足はあと3本となってしまった。
季節はすぎ、初夏を迎えた。千代は磯へ出かけ、またしても例のタコを見つけた。千代は1本頂戴した。
明くる日も出かけた。タコに残された足はあと2本。千代はそのうち1本をこれまでと同じように巧みに切ったつもりだった。
ところが大ダコはひるむことなく、最後の1本を彼女に白い腿から腰に絡ませて動きを封じると、千代の顔に墨を吐きつけて目潰しを食らわせた。
これがタコにとって乾坤一擲の一撃となる。千代を抱きすくめると、そのまま海の中に引きずり込んでしまったのだ。
こうして美しい盛りの千代は処女のまま、あろうことかタコに抱かれて海の藻屑と消えた。
残された母は渚を駆けめぐっては、「お千代! お千代!」と叫んだが、後の祭りだった。磯では油断してはいけないと言い聞かせるべきだった。
村の若者たちも麗しの千代をなくして言葉を失うばかりであった。
それ以来、大ダコの潜んでいた磯の一部を『千代取り岩』と呼ぶようになった。
「千代取り岩」伝説
http://blog.goo.ne.jp/tomotubby/e/e532892c301135e28f... 吉岡実「タコ」から
http://blog.goo.ne.jp/tomotubby/e/f498ad9cb53d7fb044...
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