ハンギング・コフィン・断崖絶壁に棺桶を吊るす葬法の島 ルソン島
フィリピン、ルソン島北部の山岳地帯にある村サガダにはイゴロットと呼ばれる少数民族がいる。
本来イゴロットは、平地で水田農耕を行っていたが、後からやってきた新マレー人により山岳地帯に追いやられてしまったという。
平地のない山間部で水田農業を行うのは並大抵ではなく、彼らは棚田の技術を向上させ、各地にみごとな棚田を残した。
棚田は地域の重要な文化遺産であり、観光資源にもなっている。
サガダは石灰岩地帯に位置するため、切り立った崖や絶壁が多い。そのなかにエコバレーという切り立った崖がある。
その断崖絶壁を利用した特異な葬送儀礼が伝承されており、観光客も見学することができるのだ。
その埋葬方法とは、断崖に棺桶を吊るすというもの。吊るされた棺の中には、燻製にされた遺体が収められている。
イゴロットは棺を崖に吊るすことで魂が『天』により近く、そして早く着き、転生を信じた。同時に遺体が野生動物に荒らされないという合理的な一面もある。
この葬送儀礼を懸棺葬『ハンギング・コフィン』、あるいは懸崖葬と呼ぶ。広義には『崖墓(自然の洞穴を利用した葬送)』の範疇に含まれるものだ。
このような例は中国の四川盆地周辺でBC500年くらいの時期のものが見られるという。この時期の懸崖葬の特徴としては船形棺、副葬品、岩絵が上げられており、
類似の葬送文化は古代日本、東南アジア島嶼部で広く見られる。
それは中国奥地で誕生した懸崖葬、崖墓の風習が民族の移動とともに拡散していったと考えられるが、伝播ルートははっきりしていない。
エコバレーではいくつもの木棺、十字架、なぜか椅子なども吊るされ、文字がペイントされている。
その様子はさほど恐ろしさもグロテスクさも感じさせず、墓所特有の厳粛さが漂っているだけだ。
もっとも2000年以上も続いたハンギング・コフィンは、2010年秋を最後に終焉を迎えた。
良くも悪くもキリスト教の布教がこの地にも広がり、村には教会も建てられ、イゴロット族はクリスチャンとなった。
キリスト教の慣習に従い、土葬へとその葬送儀礼を変化させてしまった。だから現在、壁に吊るされた棺は祖先のものなのだ。
村の経済的発展も必要だが、彼らは祖先の墓が観光客の好奇の眼に晒されるのはいかがなものかと複雑に思っているようだ。
死ぬまでに一度は行ってみたい場所。 崖にかかる棺桶・ハンギング・コフィン(フィリピン)
http://worldtv.blog.fc2.com/blog-entry-679.htm... Travel.jp 断崖に棺!不思議な埋葬を見にフィリピン「サガダ」に行こう
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