骨は本当に土に返るのか?
>>28の叔母が亡くなった直後の話。
親族・近所の人が集まり、2日後に控えた葬儀に向けて、段取りをしなければならなかった。
埋葬するため墓を掘らる必要があった。地域によっては専門の職人がいるだろうが、実家は身内の男衆が志願する。
まず父が名乗り出て、親戚のオッチャンと本家の長男も加わった。
「おまえも来ないか。初めてだろ。一度経験しておくといい。そもそも親戚のオッチャン、
脚が悪くて歩くのが精一杯だ。だからおまえが掘ってみろ」と、父がおれに言った。
二つ返事で了解した。
おれんとこの田舎特有のものなのかもしれないが、墓堀りに出発するにあたって、日本酒をコップ一杯振舞われた。
4人はグイとあおった。瓶に残った分も墓場に持参していく。墓掘り終えたあと、また一杯やるらしい。
日本酒には清めの意味があるそうだ。
墓場に着き、叔母の骨壷を入れるべきポイントをジョレンで掘っていく。当時は小雨が降っていたので、
思いのほか土は柔らかくて作業ははかどった。
深さ1メートルぐらいまで掘り進めたころだ、異変に気づいたのは。
土中に、細長い束が見えたのだ。
すわ毛髪か? おれたちは飛びあがる思いをした。昔は土葬を行っていたのだ。充分ありえる話。
が、よく見れば髪にしては金色。年月で脱色したとでも?
おれが代表して、おそるおそる『金色の毛髪』を手にとった。父たちは背後で遠巻きに覗きこむ。
……いや、毛髪ではない。
おそらくコレは、20年以上前亡くなった祖母の骨壷を入れた化粧箱の装飾品の一部だろうと父が言った。
葬列に並んで墓場まで歩く際、父が祖母の骨壷入りの化粧箱を抱いたのだから確かだという。
とはいえ、20年もの月日が経っているにもかかわらず、よく原形をとどめていたものだ。
気を取り直して、墓堀りを再開。
どうやら祖母の骨壷が埋まっているポイントと、わずか数センチしか離れていなかったらしい。
ついでと言ってはなんだが、祖母の骨壷も掘り起こすことにした。 どうせ身内のだ。
すぐソレは見つかった。案の定、白木の化粧箱に入っていた。(フツー、骨壷のまんま埋葬するんじゃないのか?)
今度は父が代表して骨壷のフタを開けてみた。
中の骨片は、てっきり湿度でベタベタになっているのかと思いきや、まるで昨日荼毘に付したみたいに乾燥し、
キレイなもんだった。おれは祖母の亡骸の一部を手に取り、しげしげと眺めたものだ。
よく「人が亡くなれば土に還る」というが、はたしてそうだろうか? カルシウムは意外と分解されにくいのではないか。
現に縄文時代の白骨がいまだに出土するし、粘土質の土中に埋まっていると傷みにくいとも聞く。
このケースの場合、いくら密封状態とはいえ、まるで『土』に戻る気配はなかったのだ。
その日、おれはちよっと人の命と死について見つめなおした。
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