昔、訳あって地元の山ん中の滝へ、知り合いと2人でお参りに行ったことがある。
滝の高さは4メートルぐらい。滝つぼ含めて5メートル四方の池ができている。
その池の中央に岩場が顔を覗かせており、誰が備え付けたか、不動明王の銅像が立っている、なんともいわくありげな場所だ。
そこでしばらくいると、水音に混じり、大勢の人の声が聞こえてきたんだ。声というより韻を踏んだ唄といった感じ。
ところが周囲を見渡しても、人の影は見当たらない。そのくせ唄はおれたちのすぐ近くで木霊している。
幸いなことに近づいてくる気配はない。
直感で山伏や行者などの祝詞だと思い浮かんだ。(実際に聴いたことないけど。なぜかとっさに直感が働いた)
なんとなく行者たちが滝の上の岩場をぐるりと囲み、眼下のお不動様めがけて一心に祝詞を唱え、修行してるような風景が見えるようだった。
どうやらこの姿なき行者たちの唄は、おれだけにしか聴こえないらしい。
連れ合いに聞いてもまったくの聴こえないとの返事。誓っておれの聞き間違いや幻聴ではない。
結局、その場を去るまで祝詞はやまなかった。ゾッとするわけではなく、かといって愉快なものではなかったが、不思議な体験だった。
その後、二度目にその場所を訪れたけど、祝詞は聞こえることはなかった。
いずれにせよ、山では稀におかしなことが起きる。
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