インド仏教が中国に入ってきたとき、中国では先祖霊を崇拝する“シャーマニズム”が
強く人々の心を支配していました。
そして仏教の輪廻思想と真っ向から対立することになりました。
なぜなら輪廻思想のもとでは、中国人にとって最も重要な先祖霊も存在しないことになり、
先祖霊の崇拝自体が意味をなさなくなるからです。
儒教は、中国人の先祖霊崇拝・先祖霊信仰というシャーマニズムを基礎にして、家族理論と
政治理論を積み上げて成立した広大な思想体系であり、単なる倫理道徳ではなく、底辺に
「先祖霊崇拝」という要素を持った宗教なのです。
先祖霊への崇拝を土台とする儒教は、中国民衆の心をつかみ、外来のインド仏教と鋭く
対立することになりました。
やがてそうした仏・儒の抗争の中で、仏教サイドが譲歩し、輪廻思想とは全く無関係な
先祖霊崇拝・先祖霊信仰を取り入れるようになりました。
その際、仏教サイドが考え出したものが「偽経(ぎきょう)(インド原典のない仏典)」
だったのです。
インド仏教と違うことを教えとするために、新たに偽の経典をつくることを思いついたのです。
偽経の代表が、『盂蘭盆経(うらぼんきょう)』と『父母恩重経(ふぼおんじゅうきょう)』です。
前者はお盆の行事の根拠となる経典で、仏教における祖先祭祀の合理化をはかったものです。
後者は現世の孝を説く経典で、子供を育てた父母の恩の重いことを述べたものです。
仏教サイドが儒教の孝を取り入れようとした結果つくられた偽経です。
こうしてインド仏教とはかけ離れた中国仏教が出来上がることになりました。
本来のインド仏教には、墓石(墓標)を立てることや墓参りはありません。
日本の家庭に見られる仏壇は、仏教本来のものではなく、儒教における祠堂(しどう)が
ミニチュアとして取り入れられたものです。
また仏壇や寺に安置される位牌も、儒教の招魂儀式で呼び寄せた祖先の霊を憑かせる
「神主(しんしゅ)(依代(よりしろ))」を模倣したものです。
もちろん本来の仏教にはこうしたものは存在しません。
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