「へふー。」隆はパソコンを見ながらため息をついた。
理香が振り向いて言った。「どうしたの?」
「くそー、なんか祭りになっちゃってさあ」
つぎつぎに、彼を嘲笑する書き込みが増えていく。いわゆる「祭り」だ。
あるサイトのオカルト板に出来の悪い話をに投稿したのだが、住人の質が悪かったらしい。
「ほんとうに下らないことを書き込むのね。」理香が言い放った。
「だからネットに書き込むのは良くないって。もう、早く買い物連れて行ってよ。」
「ネットってこわいね。よしっ買い物行こう。」
いっぽう、悪口を書き込んでいた男は自室で生まれてはじめてのガッツポーズをした。
「やっほー。とうとう核シェル先生を撃退したぜ。Wikiにものせよう うひひひひひ。」
またぐらを掻きながら、異常な興奮をするのは30歳の屁理屈クン(仮名)。
「ちくしょーとかってくやしがっているんだろうなあ、核シェル先生。げひょひょひょ。」
が、実際には、仕事や私生活が忙しくなった隆は、二度とそのスレを覗くことはなかった。
いくらまっても現れない核シェル先生を屁理屈クンは病院で徹底的にディスりはじめた。
なんねんもなんねんも、核シェルを待ち続ける屁理屈は、まるで忠犬だった。
くろぐろとしていた髪はすっかり抜けおち、40歳になった。年齢=童貞暦=魔法使いである。
「あれっ。 あの患者何してるの?」ある日、隆が看護婦にたずねた。
「ほら、あれですよ先生。キーボード打ってるつもりなんですよ。」
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