意味がわかると怖い話4

目を開けると、目の前に死体が転がっていた。

見知らぬ中年女で、見るもおぞましい苦悶の貌を浮かべてこと切れている。
一瞬、俺の母親かと思ったが、すぐに違う事はわかった。
暗闇の中、死体のある場所だけに光が当たっている。周囲は見えない。
恐る恐る近づくと、他にも数人が中年女の死体のまわりに集まってきた。
俺も他人の事は言えないが、誰一人救急車や警察を呼ぼうともしていない。

「あの…こう言う時って、どうすれば良いんですかね…？」
俺の隣にいた、人生経験豊富そうな老人に声をかけた。老人は俺を珍しげに見返し、何も言わない。
「野次馬に小さな子供までいます。警察とか呼んだほうが良くないですかね？」
老人は少し考える素振りを見せてから、ゆっくりとかぶりを振って口を開いた。



そして俺は、暗闇の中で唯一スポットライトを浴びているような女の死体を見詰める事しか出来ない事を悟った。

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