インドに発生した仏教が、似ても似つかぬ日本仏教に変化してしまったのには、
それなりの理由があります。
中国に渡って、先祖霊崇拝・先祖霊信仰というシャーマニズムを基礎にする儒教と
相容れず激しく対立した仏教側は、やがて譲歩して輪廻思想を封印し、「盂蘭盆経」や
「父母恩重経」という偽の経典を新たに作り、祖先祭祀を肯定する中国仏教を誕生
させました。
その中国仏教が日本にも入ってきたわけですが、日本にも太古より「先祖の霊は死後、
時間の経過とともに浄化され、やがて氏神になり子孫を守るようになる」という信仰が
あったため、中国仏教(=ほぼ儒教)との親和性が高く、これを受け入れやすい土壌が
最初からあったのです。
柳田國男によると、日本人には「あの世にいる先祖は山や海に住んで、お盆や正月に
子孫の元に帰ってくる」との信仰が元々あったそうですが、原日本人の末裔と考えられる
アイヌにも霊魂観に基づくあの世とこの世の往復についての信仰があると報告されており、
柳田の説を裏付けています。
日本の家庭に見られる仏壇は仏教本来のものではなく、儒教における祠堂(しどう)が
ミニチュアとして取り入れられたものです。
また仏壇や寺に安置される位牌も、儒教の招魂儀式で呼び寄せた祖先の霊を憑かせる
「神主(しんしゅ)」「依代(よりしろ))」を模倣したものです。
もちろんインド仏教にはこうした物は存在しません。
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